第149回芥川賞受賞作品は33歳の藤野可織さんの『爪と目』でした。
どんどん読ませる文章に感心しましたが、正直、読後感はあまりよくありませんでした。
その気持ちがずっと続き、暗い気持ちになりました。
登場人物がデフォルメされているとはいえ、あまりに感情の無い人間ばかりで、ぞっとしました。
その意味で、よく言われているように「ホラー」だと思います。
個人的には少し不思議な怖い雰囲気のある小説が好きで、特に小川洋子さんの作品の世界には魅了されます。
小川洋子さんも「妊娠カレンダー」で芥川賞を受賞されました。
妊娠中の姉に、妹が農薬で汚染されているだろうグレープフルーツでジャムを作り、食べさせる。
という怖い話ではあるのですが、それだけではなく、美しくて哀しいのです。
小川さんの文章にはいつも静かな音楽が聞こえてくるようです。
さて若い藤野さんはこれからどんな作品を書いていくのでしょうか…。