年別アーカイブ: 2019年

さようなら小さなスーパー

fuji家の近くの小さなスーパーが閉店となりました。
スーパー激戦区ともいわれるこの地域に、大型チェーン店ではない小規模のスーパーは生き残りことが出来ませんでした。
それでも大抵の物は揃いましたし、なにより家から5分もかからないのは足の悪い私にとってはありがたいものでした。
レジも3つほどですが、店員さんはカートを押す私の籠をさりげなくカウンターに運んでくれました。
買い物客が顔見知りの店員と言葉を交わします。
買い物をしたお年寄りがゆっくり歩いて帰って行きます。
あの方々はこれからどこで買い物をするのでしょう。心配で胸が痛みます。
始まった軽減税率にしても、なんだかお年寄りがいつも置いてきぼりになっているような気がしてなりません。

原爆の歌

irei74年前、8月6日に広島、9日に長崎に原爆が落とされ15日に日本は終戦をむかえました。
母は原爆を体験したことはないのに、よく原爆の話をしました。
話の最後に歌う原爆の歌。
「原爆許すまじ」作詞:浅田石二、作曲:木下航二
それは幼かった私の心に深く根付きました。
今年の4月。母の三回忌で故郷に帰った時のことです。
法要の日の朝、ホテルの近くの公園に散歩に行きました。
大きな沼のある公園はランニングや散歩の人々がたくさんおられました。
公園の中に原爆の碑がありました。それは広島、長崎で被爆した県民の慰霊のために被爆40周年を祈念して昭和61年に建てられたものでした。
少し離れたベンチで休んで居た時、あの原爆の歌が聞こえてきました。
ご婦人が碑の前で歌っているようでした。
姿を探せど、歩き去る後ろ姿のみ。
毎朝の散歩の折に遠く離れたこの地に原爆を受けたどり着いた方々に思いをはせ、祈り歌っているのでしょう。
母と同じ歳のころのご婦人。折しも三回忌に母から送られたメッセージのようでした。
戦争の体験者も記憶も少しずつ薄れて来ています。
でも「戦争を忘れないで、二度と繰り返さないで」と切に願います。

ベニガオザル

beniakaozaru
NHK「ワイルドライフ」で2回特集された「野性のベニガオザル」。
タイ王国の保護区に生息する絶滅危惧種の霊長類です。
その若き研究者は同級生の息子さん!
ベニカオザルの社会生態学的研究をしておられます。
仲間同士のケンカを赤ちゃんザルが仲裁したり、争いを回避するための互いのスキンシップ。
種の保存の為とはいえ、とても興味深い行動をする猿です。

私は若い時に植物学者が集まる研究室でアルバイトをしていました。
その時は研究者の方々が少し変わった人達、今でいうオタクのように感じていましたが、
人生の半ばを過ぎた今振り返れば、本当に恵まれた人生を歩んでいらしたことに気がつきます。特にフィールドワークに出かけるのは本当に生き生きして楽しそうでした。

若き博士のお顔が同級生にそっくりで、彼女を懐かしく思い出します。
彼女の中にも何かに一途に夢中になる情熱があったかもしれません。
今は体調を崩している彼女ですが、心の翼はいつでも広いフィールドを飛んでいるに違いありません。

パトラとルミナ

patora小学生の時に読んだ石森延男の『パトラとルミナ』。
大学で児童文学を学んでいる時にふと思い出し、もう一度読みたいと切望しました。
絶版本を探しあぐねて40年あまり。
とうとうインターネットで手に入れることが出来ました。
出版社はかつて講談社の子会社であった東都書房。昭和34年の発行です。
第1部と第2部に分かれた2冊の本は装丁も美しく、全頁に日本画家 松田穣の挿絵が入っていました。
架空の国、その自然の中でのパトラという男の子とルミナという女の子の冒険と成長の物語。記憶とは少し違ってはいましたが、今でも読みだしたら止まらない素晴らしいファンタジー作品です。
石森延男は『コタンの口笛』の代表されるリアリズムの児童文学作家で、キリスト者であったようです。このファンタジーも架空の世界を描きながら、生きる上で人として大切なことを子どもに教えています。
『パトラとルミナ』は最初は中部日本新聞に連載されていました。もう60年近く前のことになりますが、いまでも覚えている方がいるようで、ネットで調べると店名に使われたりしていました。
現在でも子どもの読み聞かせたい作品だと強く思います。

手袋のゆくえ

tebukuro電車の中で二人分の席を占領して若い男性が爆睡していました。
次の停車駅に着くと、慌ててドアが閉まる寸前に降りていきました。
座席には残された手袋。
ホームで彼も気が付いたのか、あたふたした様子が見えましたが時すでに遅し。
手袋はそのままで2駅先の終点に着きました。
一部始終を見ていた私は、手袋を拾って駅に届けようかと思っていました。
その時、降りた彼の隣に座っていた若者が手袋をつかんで降りて行きました。
そしてそのまま駅の事務室に入って行き、状況を説明して事務員に渡しているようでした。
茶髪で少しヤンキーぽい若者でしたが、その心使いに感心しました。
手袋が持ち主に戻ることを願いつつ、去っていく彼の後姿に拍手!