子どもの頃、毎朝6時半頃になると、納豆屋さんが「チャリン、チャリン」と鐘を鳴らしながら回って来ました。
三角に折った経木に包まれた納豆は、出来立てで温かく、大粒で柔らかく本当に美味しかった。
母から、家族で細々と苦労してやっていると聞いて、子ども心に毎朝早くから大変だなぁと思っていました。
結婚して納豆の名産地に住んだこともありますが、やはり私にとっての納豆は故郷のあの納豆です。
物心付いた時から聞いていた納豆屋さんの鐘の音ですが、急いで飛び出して買いに行くのは母ばかりで、納豆屋さんの姿を見たことさえありませんでした。
それでも嫁いで家を離れるとき、会ったことのない納豆屋さんとの別れが妙に悲しく思われたものです。
30年以上納豆を作り、売って回った納豆屋さん、今は引退して豊かに暮らしているとうわさに聞き、心からよかったと思っています。