その昔、結婚祝いは何がいいかと伯母に聞かれ、「裁ちバサミ」をリクエストすると、「ハサミなんて、何だか縁起が悪いわ」とぼやきながら贈ってくれました。
洋裁が得意な伯母だからこそ頼んだそのハサミは、一生ものです。
母の知人は三徳包丁を贈ってくれました。
それに刃こぼれがあるのか、切れ味が今一つになっていました。
百貨店でセールをしていたので、新しい包丁を買おうと見に行きました。
その時、店員さんが「今お使いの○○の包丁でしたら、△△百貨店が取り扱っていますよ。いいものだから手入れし直してくれますよ」と教えてくれました。
家に戻り、改めてその包丁を見ると、メーカーの刻印と共に、生まれ育った町の金物屋さんの屋号の刻印がありました。
この包丁を贈ってくださったのは、幼い頃からリュウマチを患う娘さんをもった方でした。
同じように持病を抱える私の結婚を心から喜んでくださっていたのでしょう。
決して裕福とはいえない状態で、町一番の金物屋さんで、一生ものの包丁を選んでくださったのです。
今は亡きその方の心を改めて思い知りました。
研いて手入れして、これからもずっと使い続けようと思っています。