前から気になっていた中島京子さんの「小さなおうち」が文庫になったので早速買ってみました。
近頃、1時間ほどで読める小説が多い中で、これは本当に読み応えがあり、久しぶりによい作品に出会えたと思います。
元編集者の中島さんの、徹底した取材の上で展開される物語は、昭和初期、戦前の人々を生き生きと描き出しています。何より細部がしっかりしているので、臨場感が味わえるのです。
戦前、戦中の物語でも、視点が違えば、暗く、厳しいものも数多くあるとは思いますが、市民の暮らしで起こる出来事は案外、今の私たちと変わりなかったのではないか思います。
中島さんの「イトウの恋」も綿密な取材の上に書かれた作品でした。
私のとっての小説の醍醐味は、自分の存在しえなかった時代の空気を感じることだと、強く思いました。